幸せをつなぐ紅型ヘッドレストカバー~知念紅型研究所~
日本トランスオーシャン航空(JTA)は、お客さまに「より沖縄らしい空の旅」を楽しんでいただけるよう、1年を通じて琉球紅型作品を鑑賞いただけるクラスJ座席ヘッドレストカバーを展開しています(2020年1月~4月までは「城間びんがた工房」による「海中艶」)(https://jta-okinawa.com/jtajournal/shiromabinngata/)
この紅型ヘッドレストカバーシリーズは、紅型三宗家を始めとする紅型職人の協力のもと実現した企画であり、「本格的な紅型の美しさが機内で楽しめる」と非常に好評です
現在機内に展示されている第2弾ヘッドレストカバー(2020年5月~8月まで)を制作したのは「知念紅型研究所」
知念紅型研究所は、琉球王朝時代から続く紅型三宗家の一つで、沖縄を代表する紅型工房です。
今回、JTA客室乗務員 外間が知念紅型研究所を訪問し、10代当主・知念冬馬さんに紅型の魅力についてお話を伺いました。
知念紅型研究所の紅型の特徴
外間
知念紅型研究所の特徴は、どのようなものでしょうか?
知念
私の祖父、知念貞男が「竹」や「ふくら雀」の柄が好きだったので、それを使った柄が多い事です。天に向かってまっすぐ伸び、生育が早く丈夫な「竹」は気高さや力強さを、ふっくらと丸い姿の「ふくら雀」は豊かさや繁栄を表しています。
また「知念家」の紅型は、私たち「知念紅型研究所」と「知念びんがた工房」の2つの家が受け継いでいるのですが、戦前の古典柄が多く残っているという特徴があります。
外間
それは何故ですか?
知念
戦前、紅型の需要が少ない時期があり、知念家でも紅型を作れない時期がありました。
そのような時期に、人間国宝・鎌倉芳太郎が研究で沖縄に来ていました。そこで琉球王朝時代から残っていた、知念家の所蔵を多く含む型紙約2,000枚を鎌倉芳太郎へ譲ったと聞いています。
外間
そんなに沢山!すごいですね
知念
知念家の先祖も、型紙や資料などを形として、どうにか残していきたかったんだと思います。
鎌倉芳太郎は譲り受けた型紙を、研究の為に沖縄から持ち出していました。おかげで戦火を免れた知念家の型紙が多く残っており、彼の型紙資料集には知念家のサインが書かれた古典柄も非常に多く入っています。
外間
とても貴重な型紙ですね。残っていてくれた事に感謝したいです
知念
本当ですよね
紅型の貴重さに気づいた留学経験
外間
冬馬さんにはイタリア留学の経験があるとか。留学中、紅型について感じた事はありますか
知念
イタリア留学は短期だったし、紅型はあまり意識していなかったんですけど(笑)
色んな美術館を見て回りました。
そこで改めて日本のデザインや、紅型や織りの技術が貴重なものと知ることができました。自分の周りに普通にあった紅型が、当たり前ではないのだなと。
この気づきが無かったら、ただ当たり前に継ぐだけで、価値や歴史をより深く知って学ぶ事に時間がかかっていたと思います。
外間
大切な気づきでしたね!
想いを込め「全体をイメージ」する紅型制作
外間
実は…私、首里高校の染織デザイン科の卒業です。専攻は「織り」だったので、紅型は基礎しかやっていないのですが、昔から工芸に興味がありました。なので、今日はずっと感動しています。
知念
そうなんですね。織りも大変神経を使う仕事ですし、どの分野にしても工芸に興味を持ってもらえる事は嬉しいです。
外間
学校で紅型作品を作る時に、どの柄の型紙を使うか、配置をどうするか、この型紙に合う色は何か・・・と作品をデザインしていくのが、すごく難しかったのを覚えています。
知念さんはどうやって、デザインを決めているのですか?
知念
僕は「こういう着物を作りたい」と全体の構成から考えます。次に、そこに何の花や文様を使おうか考えてますね。色は、柄を作っている時にも考えているんですけど、最終的には変わってしまうことも結構あります(笑)
外間
知念さんは、初めに柄ではなく「イメージ」を作るんですね。なるほどです。
幸せと成長をつなぎ、旅の成就を願う「JTAヘッドレストカバー」
外間
今回のJTAヘッドレストカバーは、どんなイメージでしょうか?
知念
今回の柄は全て縁起物で、うちの特徴でもある「ふくら雀」と「竹」の柄を取り入れています。
「竹」はスクスクと成長することを願い、「ふくら雀」は繁栄を願う柄です。また、「ご縁をつなぐ」という意味のある七宝柄も描いています。
何かしらの縁で同じ飛行機に乗っているお客さまが、JTAさんを通じて繋がっていけばいいなと思いデザインしました。
外間
知念紅型研究所の特徴と縁起物の柄を取り入れて、「幸せな縁をつないでいく」という想い、すごく素敵です!
知念
それと、飛行機に乗る理由って旅行とか出張とか、色々あると思います。その人たちの目的が上手くいけばいいな、という想いも込めてます。
外間
こんなに温かい思いが込められているなんて、感動です。
今日のお話しやヘッドレストカバーに込められた想いを、機内でお客さまへ是非お話ししたいと思います。この紅型ヘッドレストカバーから、沖縄の魅力を感じてもらえる方が増えるんじゃないかと、私も楽しみです
祖父・知念貞男から受け継ぐ想い
知念
戦前は、紅型の「家の技術」は門外不出で、身内だけに伝えていました。
しかし祖父・貞男と祖母・初子は、紅型をつないでいくには、職人さんに技術を伝えないといけないって考えたみたいです。なので、職人さんの挑戦も「やってみなさい」と言える祖父でした。当時は珍しかったでしょう。
「紅型を残していく」という思いが強かったんでしょうね。
外間
王朝時代から続く「伝統の紅型技法」を守っていくのが、職人の想いだと思っていました。しかし祖父の貞男さんは、新しい紅型を見つけていったんですね。
知念
紅型を残すためには、新しいものを取り入れていかなければ…と考えていたと思います。
知念冬馬さんにとっての紅型とは
外間
知念さんは、これからどのような紅型を作っていきたいですか?
知念
僕は、難しい昔の技法に挑戦することが多いです。
今は「朧型(おぼろがた)」という、複数の型紙を重ねる技法の紅型を作っていますが、これが本当に技術がいるもので…戦後はほとんど目にかかる機会が無かったと思います。
それを「もう一度作りたい」というのが、一番強い想いです。「紅型の技術を見せつけてやりたい!」みたいな(笑)
外間
手間と技術が必要な朧型を多く作るって凄いです!本当に挑戦的ですね。
今の冬馬さんの作品に、貞男さんの想いが引き継がれている感じがします。
知念
祖父が挑戦的な人だったので、そこだけはしっかり続けて僕も新しいものに挑戦していかないと、全てに置いていかれそうな気がして…沖縄の特徴そのものが無くなってしまうんじゃないかなと、漠然と感じるんです。
外間
紅型を継承していく覚悟や強い意志をすごく感じます!
知念
僕は、紅型を日常に溶け込む使い方をされる「工芸」に持っていきたいです。
日頃、当たり前に使っている「工芸」は、「伝統」なんて言葉をつけなくても生き続けていきます。そこまで紅型を持っていくのが、これからの目標です。
沖縄の魅力を伝えたい
今回工房を訪問し、知念冬馬さんを始めとする職人の方々の優しさ・覚悟・想いが美しい紅型を生み出しているのだと感じました。
美しい自然、伝統芸能・工芸や文化…沖縄には多くの誇れるものがあります。
そのような「沖縄が誇れるもの」を守り伝えていこうとする、人々の姿・想いも沖縄の大きな魅力だと思います。
JTAでは、ご搭乗いただく皆さまに「沖縄の魅力」を知ってもらうお手伝いができたらと思っています。
「知念紅型研究所」制作の紅型ヘッドレストカバー、JTA機内で是非お楽しみください(2020年8月まで)
(取材 2020年4月1日)
【知念紅型研究所】
琉球王朝時代から続く紅型三宗家の一つ
「竹」や「ふくら雀」の図柄が特徴
知念冬馬さんの想いが詰まった、美しい紅型をお楽しみください
https://www.chinenbingata.com/