沖縄にクラフトジンが誕生!
日本最古の蒸留酒は?
泡盛!沖縄でしか製造していません。(できません)
原料は米と黒麹。糖質ゼロ・プリン体ゼロという体にいい泡盛ですが14年連続売り上げ減少の一途をたどっています。理由は様々でしょう。若者の酒離れとか選択肢が増えたとか、特に最近はハイボールが人気になっています。
泡盛の酒造所は現在43カ所。そのうちの3つの酒造所の若い技術者が互いに切磋琢磨し沖縄で初めて「クラフトジン」の製造に成功。販売早々話題になり海外での評価も高い。実際に製造した石川酒造の平良寛進さん、瑞穂酒造の仲里彬さん、まさひろ酒造の鈴木一人さんをお招きしてお話を伺いました。
左から仲里さん、平良さん、鈴木さん
会社でジンを造りたいと言った時、会社の反応について伺うと、意外にも拒否反応がなかったとのこと。積極的な賛成という事ではなく「やってみたら」という事だったようです。
というのも3人はそれぞれ大学、大学院で理論も身につけており酒造所に就職してからは現場で酒造りをして技術も習得していたからでしょう。とは言ってもそうそう簡単に製造できるものではないのですから試行錯誤、研究を積み重ねての成功だと思います。
ジンとは?
すぐに思い浮かぶのは「おしゃれなバーで飲むカクテル」です。ジンフィズ、ジントニック、ジンハイボールなどで泡盛やビールのような気軽さはありません。どちらかといえばヨーロッパで日本的でもないジンをなぜ沖縄で造ろうと思ったのか・・
鈴木さん
僕は県外出身で大学を卒業したあと県外の食品開発会社に就職し趣味でカクテルを作ってました。ある時、京都の酒造所がジンを製造販売した事を知り造ってみたくなって、ちょうどまさひろ酒造が職人を募集していたので迷いなく就職しました。
入社10年で念願の沖縄初のクラフトジンの製造に成功したんです。クラフトジンは製造に明確な定義がなく、度数47%以上で原料や製法、産地にこだわって造る泡盛よりもかなり自由度の高いんですよ。
まさひろ酒造のクラフトジン(まさひろオキナワジン)
一般的には大麦やトウモロコシ、ジュニパーベリーですが、3社とも沖縄にある原料にこだわり沖縄由来のフルーツ、植物を使用して製造しています。代表的なものはシークワサー、ピーチパイン、カーブチーの皮、沖縄産イチゴ。意外なものはショウガ、ヒハーツ(胡椒)、ゴーヤ、などなどで3つの酒造所でそれぞれ使用しているものが異なるのも面白いです。
仲里さん
瑞穂酒造はさくら酵母の泡盛を使用しているのも特徴ですね。
瑞穂酒造のクラフトジン(ORI-GiN 1848 Strawberry)
平良さん
石川酒造は沖縄在来のシナモンの仲間であるカラキの葉を乾燥させたものを使って、フルーティでありスパイシーでありトロピカルな、まさに南国沖縄!のクラフトジンになりました。
石川酒造のクラフトジン(左から石川酒造場ネイビーストレングスクラフトジン2019、石川酒造場ジンジャークラフトジン)
価格は一般的な商品と比べて少し高めなのですが、こだわりぬいた沖縄発のジンはありがたいことにバーテンダーの方々からも高い評価を受けています。
泡盛のように自宅で毎日気軽に飲むというより「特別な日の贅沢な一杯」として楽しんでほしいですね。
それぞれが目指す今後は?
平良さん
これを機に沖縄独自の文化を共有し原料の掘り起こしにも力を入れて行きたいですね。
仲里さん
歴史が長い割には地味な酒造所なのでこれを機にもっと知ってもらえたらと思います。
鈴木さん
ジンにこだわらずこれからもいろんな可能性にチャレンジして行きたいです。
3人に共通している強い思いは「クラフトジンを泡盛への入り口として最後はやっぱり泡盛を!」でした。次時代を担う泡盛業界のリーダーたちは「技術者の会」で月に一度勉強会を開催しているとのことです。3社で合同でイベントを開いたりセミナーを開催したりしています。
少し前の泡盛業界の雰囲気とは全く違い会社の垣根を越え技術を磨き研究に精進している姿はこれからの泡盛の未来を明るく照らす希望のようです。
鈴木さんが面白い事を言いました。
鈴木さん
ジンを飲んだ人から「これは人をダメにする酒だねえ!」と言われました。つまり虜にするって事らしいですよ!
私は炭酸とシークワサーで飲みました!皆さんもぜひ飲み比べて楽しんでください。3人とも30代、40代でパワーいっぱいです。これからもたくさんのチャレンジ期待しています。
各酒造所ホームページ
石川酒造:http://www.kamejikomi.com/
瑞穂酒造:https://www.mizuhoshuzo.co.jp/
まさひろ酒造: https://www.masahiro.co.jp/
*それぞれのクラフトジンの詳細はホームページなどでご覧ください。
ライター 下地恵子