第26回 崎元酒造所(与那国島)
当記事は2018年2月28日にサイトクローズした「美ら島物語」で公開していた記事です。
日本最西端の与那国島・最古の蔵を訪ねて
与那国島の酒といえばクバの葉で巻かれた60度の強い花酒!が有名です。
与那国島だけに製造が許されている特別なお酒です。現在与那国島には3つの酒造所があり、それぞれで60度の花酒を製造しています。琉球王朝時代には王府へ献上されていたそうです。
昔、与那国島は台湾との密貿易が盛んで人も物も溢れ豊かな島だったようです。
一度、多良間島の行政区に入っていたため宮古島の管轄になっていた時代もありますが、その後八重山の行政区になりました。
山がそびえ水も豊富にある島は昔から田んぼもあり米の栽培も盛んでした。
現在の崎元酒造所は1927年、米農家19人で出資し酒造りを始めますが65年には4人になり、1971年、出資者の一人「崎元 初」さんが独立して、新たに「久元酒造」として出発しました。
瓶詰めもラベル貼りもすべて手作業で行っている。最初の銘柄は「稲穂」という名前だったそうです。
のちに与那国に変わりました。もともと久部良一族ということもあり、それぞれ一文字ずつとって命名したようです。
その後、現在の崎元酒造所になりました。最初のスタートからしたら今年90年。
与那国島最古の蔵です。現在5代目の崎元俊男さんにお話を伺いました。
与那国島
いずれは島に戻って酒屋の跡継ぎに・・と思っていた俊男さんは県外でサラリーマンをしたあと、那覇で3年ほど「修行」して島に戻りました。
サラリーマンの経験からなのか・・島に戻る前にすでに那覇で「営業所」を立ち上げていたといいます。
与那国島・石垣島だけで販売するのは売り上げに限界があり、販路の開拓は必然でした。
「与那国」という島の名前の酒は徐々に知れ渡ります。与那国島の酒といえば「クバの葉で巻かれた60度の酒」という知名度もすでに高かったので珍しさもあって広がっていった。今でも一番人気はやはりクバで巻かれた「与那国島」だそうだ。
なぜ?いつからクバの葉で瓶を巻くようになったのか・・出荷する際の保護用だけだったとは思えない・・ 。
崎元酒造の最大の特徴は「古式地釜蒸留」。創業以来変わらない!
煉瓦を積み上げた台の地釜の中を、人の手で焦げないように攪拌していくので、一時も離れることはできない。
時間も体力もかかるが、先祖代々受け継がれてきた手法は変えるつもりはない!ときっぱり。
気負いも全くなく自然体だ。この方法は二日酔いのもとになる「ホルムアルデヒド」が少ないといわれ味もさっぱりで少々の飲み過ぎは大丈夫!(*個人差がありますのでご注意!)
工場見学もできます。
現在の工場は11年前に移転し、以前より規模も大きくなり製造量も増えました。
もう一つの特徴は、与那国島産のお米で2005年から酒を製造していること。
社長いわく、「あまり売れませんがやめるつもりはない」そうです。
泡盛業界が「島産の米で酒を造る」という方針を打ち出していることもあり、今後は自社の田んぼで米を作り酒を造る計画も練っています。
日本最西端・国境の島で
町議会議員、与那国町観光協会長も務め酒屋の社長以外の任務も多い。与那国島をどう発展させていくか・・課題も多い。
与那国島は「長命草」での島興しをしていて焼酎にヒントを得て「長命草酒」の製造を手掛け、ついに販売開始している。同時にもろみ酢も製造・販売している。
一枝 食すると一日延命する、といわれる薬草で、そばやケーキなど色んな業種で商品開発されている。
今後は与那国島の特産品・名品である「塩・カジキ・かまぼこ・長命草」などと一緒に与那国島を島・県外にPRしていきたい。現在もあげて取り組んでいる台湾との交流も益々進化させていきたい。
国境の島・与那国。
晴れた日には台湾の島影がクッキリ見えるほど近い!とはいえ、昔の船で海を渡り貿易をするというのは大変だったと思う。
どなんと呼ばれた与那国島は「渡難」だったのである。歴史が見えてくる気がする。
ちなみに中国からたまに60度の花酒の注文が入るそうだ。
「人と酒に国境はナシ!」で、嬉しくなってくる。
日本最西端の島の最古の蔵。創業90年、蔵の歴史が島の歴史を感じさせる。工場見学もできますので与那国島に出かける際はぜひお訪ねください。
*2017年3月、4月のJTA機内販売で「クバ巻60度・与那国島」と「おこげ12年・古酒 43度」を販売しておりました。
崎元酒造所
住所:〒907-1801 沖縄県八重山郡与那国町与那国2329
電話: 0980-87-2417
(2017.3.28 掲載)