沖縄最北端の島の酒造所
今帰仁(なきじん)運天港からフェリーいへやで約80分。東シナ海に浮かぶ伊平屋島は沖縄の有人島では最北端の島です。現在の人口は約1400人。島には野甫島があり全長680Mの野甫大橋で繋がっています。飛び込みたくなるほど美しい「伊平屋ブルー」の海は言葉では言い表せないほどです。伊平屋島は水が豊富で何とダムもあります!サトウキビの他、米の二期作栽培も行われていて宿で食べたお米の美味しかったこと!モズク養殖も盛んです。山も海も豊かな自然の恵みがいっぱいの島です。天照大神伝説が息づく島で毎月のように伝統行事があり神への感謝が捧げられています。学術的にも貴重な神歌も継承されています。毎年開催される伊平屋島ムーンライトマラソンはランナーあこがれの大会!「星の声援。月の伴走」何ともロマンティックなキャッチフレーズです。
伊平屋酒造所は1948年、島の有志による組合形式で設立され首里から職人を招いて酒造りを始めました。その後組合は解消され1949年保久村昌弘氏によって伊平屋酒造所としてスタートします。現在は昌章氏が工場長をつとめています。私たちが訪ねた日はちょうど前日まで行われていた伊平屋祭りの片づけ作業で工場長が多忙だったため妻の政代さんが取材に応じてくれました。22歳で結婚した時、昌章氏は1本釣りの漁師さんだったそうですが父親が高齢になり酒造所を継ぐことになったそうです。タイ米でお酒を造ることも知らなかった!と笑います。今年20年。今や酒造所を支える酒屋の女将さんです。島には高校がないので中学を卒業するとほとんどの子どもたちは島を出て行きます。最近、息子さんが島にもどり酒造りの手伝いをしているので嬉しそうです。
伊平屋酒造の酒造りの特徴は割り水に天然湧水を使っていることです。4キロも離れた「いーぬかー(上の川)からタンクで運んでくるのでそれだけでもかなりの労働です。もっともこだわっているのは「麹」。麹の出来、不出来で酒の味が決まるからです。先代から「古酒づくり」にもこだわってきたそうです。
伊平屋酒造所の代表的な銘柄は「照島」です。最初の組合形式の時から使用している名前で天照大神伝説から命名したそうです。「たつ浪」は古酒で風味豊かな甘い香りのする酒です。航路に伊平屋ドゥと呼ばれる荒波の立つところがあるのにちなんで命名したそうです。離島は台風接近や気象条件によって船の欠航も余儀なくされます。航空路のない島では不便さもありますが、島で唯一の酒造所は島の人々の暮らしや島の営みの中ではなくてはならない存在です。およそ7~8割が地元で消費されているそうです。父から息子へ、さらに息子へ引き継がれていく酒造り。技術とともに島への想いも引き継がれます。島の歴史や酒造所の歴史を知ればそこで造られる泡盛もまた一味違ってくるものです。
毎年マラソン大会の記念ボトルも販売しています。工場長のブログには今年の大会のラベルが届いたこと、作業が始まったことがデザインとともにアップされています。人口1400人余の島にランナー1000名、応援、観光客合わせると人口の何倍もの人がやってきます。宿泊施設も少ない島は公民館やキャンプ場などを格安で提供するそうですがそれでも足りないそうです!
取材を終え居酒屋の帰り、私たちもムーンライトマラソコースを月の光に照らされてウォーキング?をしました!こんなに自然が豊かで歴史文化も堪能できる美しい島に観光客が少ないのはなぜだろう・・島では空港を造る話や伊是名島と橋で結ぶ架橋の話もあるそうです。取材の合間に車で野甫島も行きましたが、どこまでも続く真っ白な砂浜に観光客らしき人影はありませんでした。野甫島に渡る橋から見る海はまさに伊平屋ブルー!沖縄で一番美しい海だと思います!ぜひ訪ねてほしい島です。
*伊平屋島ムーンライトマラソンは10月20日開催。記念ボトルも仕上がっている頃でしょうか。工場長のブログもぜひチェックしてみてください。政代さん、体調もあまり良くないのに長い時間お付き合いくださり本当にありがとうございました。
▼過去の記事はこちらから:「泡盛天使の酒造所めぐり」
ライター しもじけいこ